「梅天神」(白隠禅師御真筆)掛軸
「駿河の国に過ぎたるものが二つある。富士の高嶺に、白隠禅師」と昔から言われています。そして白隠禅師(1685~1768)の御真筆である、この「梅天神」は白隠禅師75歳のときに書かれた、いわゆる「文字像(文字絵)」です。「南無天満大自在天神」という文字を使って、静岡天満宮の御祭神菅原道真公の御姿を描いています。
この「梅天神」の掛け軸は、静岡天満宮の敬神家であり後援者でもある東京在住の水野米太郎氏が手に入れられたものを静岡天満宮に奉納されたものです。「天満大自在天神」とは、道真公の神号といわれています。その起源には諸説がありますが「道賢上人冥途記」のように、仏の世界から出たともいわれています。
道真公のお顔と公が平生好んでおられた梅が、写実的に描かれています。諸家の鑑定と禅師の使用されている印譜、顧鑑夷、絵と書の線等によって禅師75歳の作とされています。
掛軸全体の中に
宵の間や 都の空に すみもせで 心づくしの 有明の月
という歌が白隠禅師の歌として記されています。全国の美術館にも展示されたこともある白隠禅師の「梅天神」は逸品であると同時に貴重な文化財でもあると思います。
(解説:静岡県美術商組合理事長 久保田達夫氏)
【文字絵の図解】
➀南 ➁無 ➂天 ➃満 ➄大 ➅自 ➆在 ➇天 ➈神
➀➂➄の間に道真公のお顔が、袖の上に梅の花が描かれている。