沖六鵬作「筆塚祭口占」
静岡天満宮の筆塚は昭和42(1967)年に建立された。 この筆塚に彫られた「筆塚」の文字は沖六鵬(おきろくほう)氏の書である。そして建立に際し、同氏により献詠・献書されたのが「筆塚祭口占」の漢詩(七言絶句)である。
沖六鵬氏(1895~1982)は、著名な書家で、明治28年静岡県志田郡の生まれ。「ろっぽうさん」の愛称で親しまれ、静岡県書道連盟会長を務められ、県の書道界発展に尽くされた。
六鵬氏の「筆塚祭口占」の書は静岡天満宮の拝殿内に展示してある。
『筆塚祭口占』 沖 六鵬 作
筆冢新成颺祝旛
書人接踵集神園
欲脩智永陏時例
天満祠前祭兎魂
(読み下し)
筆冢(ふでづか)新成(しんせい)し祝旛(しゅくばん)を颺(あ)ぐ
書人(しょじん)踵(くびす)を接し神園(しんえん)に集(つど)う
時(とき)の例(ためし)に陏(したが)い智永(ちえい)を脩(おさ)めんと欲(ほっ)す
天満の祠(ほこら)の前に兎(と)魂(こん)を祭る
(解釈)
筆塚が新たに出来あがり、祝いの(飾り付け)旗を揚げる。
書道にたずさわる人々は続々と神社の境内に集まる。
(人々は)世の中の慣習に随い(書の道を究めた随の書僧)智永(ちえい)(の「真草千字文」を(書道の模範の)手本として書写を習い、(その使い古した筆を納める事によりさらに)書道)を修めたいと願う。
天満宮の祠(神殿)の前(境内)に(今日筆塚が完成し、)(使命を果たした)
兎毫(とごう(筆))の魂(たましい)を祀り(感謝し供養する)。