神棚をお祀りしましょう
1.神棚のある家の割合
ちょっと古いデータですが、第一生命経済研究所が平成14年9月に実施した『現代人の死生観』という調査があります。全国の40~69歳の男女900名に対して行ったアンケート調査で、871名から回答を得ています。
その中で、「家に仏壇や神棚がある」と答えた人の割合は50.3%、しかし「子供時代には家に仏壇や神棚があった」と答えた人は82.9%います。つまり、平成14年には「家に仏壇や神棚がある」人は100人中50人、年齢から考えて彼らの子供時代というのは昭和30~40年代にあたると思われますが、その頃には100人中83人の家には「仏壇や神棚があった」というのです。
同じ頃(平成16年)、國學院大學が『日本人の宗教団体に対する関与・認知・評価に関する世論調査』を行い、全国167地点から無作為に抽出した20歳以上の男女2,000人のうち1,385人に対して面接による聴取り調査を行っています。それによれば、家庭の神棚の保有率は第二次大戦後から「次第に減り始め、全国平均で44%」になっているとされています。この数字は、概ね上記の第一生命経済研究所の調査結果と符合しています。
これらは10年以上前の調査であり、各家庭での神棚の保有率は、現在ではさらに減っているのではないかと考えられます。私が静岡天満宮の参拝者に対して「家に神棚はありますか」と質問すると、「ある」と答える人の割合はかなり低く、感覚的には、家庭の神棚の保有率は、既に2割か3割くらいまで減っているのではないかと思われます。
2.お神札(ふだ)を神棚に祀る意味
他方で、お守りを求める参拝者の方々は相変らず多くいます。神棚にお祀りするお神札も身につけるお守りも、お祀りする神様の御分霊(分身)です。
お守りは、人が身につけて、絶えず神様のご加護をお祈りしたり、願い事の成就をお願いするのに対して、お神札は家庭の守り神として、家族と家庭の平安を神様にお願いしたり、神様の日々の恩恵に感謝を捧げるものです。
家族一人ひとりが健康で平穏な生活を営めるように祈り、そしてそうした日々を送ることができることに感謝を捧げるために、是非それぞれの家庭において神棚を用意し、お神札をお祀りして欲しいものです。
3.神棚の祀り方
神様を棚に祀ることは、皇室のご祖先にあたる天照大御神が、お父神である伊邪那岐命から玉をいただき、これを神聖なものとして棚にお祀りしたことに由来しているといわれています。このことは『古事記』に書かれています。
お神札は神様の御分霊ですから、お神札をお祀りする神棚は、清浄なところでなければなりません。
また、神様が家族をお見守り下さり、家族が神様のご加護をお祈りするのですから、神棚のある場所は、家の中で家族が集まる場所(居間・リビングなど)がよいとされています。
神棚は、大人の目通りより高いところに、見上げるように置き、南向きまたは東向きにお祀りするのがよいと言われています。現代の住宅事情では、神棚の適当な置き場所をなかなか見つけられないようです。
和室であれば、鴨居などを利用して棚を作り、その中央に宮形(厳密には、神棚はお神札をお祀りする棚をいい、お神札を納めるお宮を模した入れ物を宮形といいます)を据えます。
洋間の場合には、神棚の棚板をポスター掛けで吊るというのも一つの方法です。どうしても棚が吊れないときは、宮形をタンスや本棚などの家具の上に置くことも考えられます。
その場合、白布や白い和紙などを敷くとよいでしょう。いずれにしても、できるだけ家族の集まる、清らかで明るく、静かなところを選ぶのがよいと言えます。
宮形は、値段的にはピンからキリまであります。数十万円の宮形もあれば、Amazonで調べれば、千円そこそこから数千円のものもあります。
高いものでなければならないという理由は全くありません。最近では、洋間に適したデザインの宮形もあるようです。
神棚の棚板もAmazonで手に入れることができます。簡単なものなのでDIYで材料を買って自分で作ることも難しくないと思います。
4.お神札の祀り方
神棚を構えたら、宮形にお神札を納めます。宮形の中央には「神宮大麻」をお納めします。
「神宮大麻」は、天照大御神をお祀りする伊勢神宮のお神札で、天照大御神は古来より皇室の御祖神として、また日本人の総氏神様として崇められてきました。
宮形の右側には、皆様の住まいする土地の氏神様のお神札、左側に崇敬する神社のお神札を納めます。
静岡天満宮は氏子組織を持たない神社ですので、崇敬神社としてお神札をお祀りすることになります。
お神札を横でなく縦に重ねてお祀りするときは、一番手前に神宮大麻、後ろに氏神様、次に崇敬神社の順でお神札を納めます。
【横に並べて祀る場合】 【重ねて祀る場合】神宮大麻を一番手前に
※神社本庁より転載
お神札は、毎年お正月が来るたびに新しいものに替えましょう。古いお神札は、一年間ご加護をいただいたことに感謝し、氏神様にお納めしましょう。神宮大麻も氏神様にお納めします。崇敬神社のお神札はその神社にお返しします。
神社では、浄火によってお神札を焼納します。
5.家庭祭祀としての神棚
神棚にお神札を祀り、家族が神様の日々のご加護を祈り、感謝を捧げるのは、神社に参詣して、神様にお祈りするのと同じことです。これは家庭内での祭祀行事といえるでしょう。
各家庭に神棚が祀られ、一人ひとりが家族とともに、日々の平穏な暮らしを祈り、神様に感謝を捧げることが広く行われることを願っています。